今年44〜45冊目 「明治」という国家 上・下

「明治」という国家〔上〕 (NHKブックス)
「明治」という国家〔下〕 (NHKブックス)

私は軍国主義者でも何でもありません。一つの民族――社会といってもいいですが――が、いろいろな経験をへて、理想に近い社会を作ろうとする。そういう向日性があります。日本社会も理想の社会を作りたい。その理想の社会は、兵隊が威張らない社会、兵隊がひっそりしている社会、そして福祉が行き届いた社会、誰でもその社会に参加したいと外国人が思う社会。それは、たとえば一時代のイギリスでした。そしてまた、一九五〇年代、六〇年代のアメリカでした。そういう社会を日本でも築きたいと思っているけれども、自分の過去に対して沈黙する必要はない。密かにいい曲を夜中に楽しむように楽しめばいいんで、日本海海戦をよくやったといって褒めたからといって軍国主義者だというのは、非常に小児病的なことです。私はかれらは本当によくやったと思うのです。かれらがそのようにやらなかったら私の名前はナントカスキーになっているでしょう。

本文より

この本を読んで、司馬先生の歴史観がよくわかりました。これから司馬先生の書籍を読むときは、この考え方を踏まえて読みたいと思います。今年からドラマ『坂の上の雲』が始まりましたが、一部にはこのドラマを軍国主義の正当化や、国威の発揚に利用しようとする人たちがいるようです。この本を読めば、そのような考え方がいかに間違っているかがわかるでしょう。私もそのような考え方には断固反対したいと思います。

以下、参考URL
世に倦む日日 NHKドラマ『坂の上の雲』 - 遺族による司馬遼太郎の遺命の裏切り
http://www.geocities.jp/pilgrim_reader/
世に倦む日日 春や昔 ? ドラマ「坂の上の雲」を見ながら侍の革命政権の夢を見る

追記:
私がこの本を読んで一番心に残ったのは、小栗忠順勝海舟の比較の部分です。どちらもすごい人物ですが、小栗忠順に共感したくなるのは私が判官びいきだからでしょうか。