今年8冊目 自由からの逃走

自由からの逃走 新版

自由からの逃走 新版

われわれの願望ーーそして同じくわれわれの思想や感情ーーが、どこまでわれわれ自身のものではなくて、外部からもたらされたものであるかを知ることには、特殊な困難が伴う。それは権威と自由という問題と密接につながっている。近代史が経過するうちに、教会の権威は国家の権威に、国家の権威は良心の権威に交替し、現代においては良心の権威は、同調の道具としての、常識や世論という匿名の権威に交替した。われわれは古いあからさまな権威から自分を解放したので、新しい権威の餌食となっていることに気づかない。

ドイツの労働者の大部分は、ヒットラーが勢力を獲得するまでは、社会主義または共産主義の政党に投票し、これらの政党の思想を信じていた。(中略)ナチズムは攻撃を開始したとき、政治的な敵対者と衝突することはなかった。敵対者の大部分はナチの思想のために進んで戦った。左翼政党の多くの支持者たちは、かれらの政党が権威を持っていたあいだは、その政党の政策を信奉していたが、一度危機が訪れると、たやすくそれを捨てようとした。


自由の問題を心理学の見地から書いた世界的名著。以前から読みたいと思っていた。読み終わるのに2週間もかかってしまった。戦前のドイツでナチズムがなぜあんなに支持されたかをかいた本書だが、内容は日本にも、そして現代にもあてはまる。なぜ、戦前の日本でみんな戦争に協力したのか。そして、小泉元首相はなぜ90%もの支持を得ることができたのか。それらを考えるうえで、本書は有効。オバマ大統領も批判することができないような雰囲気ができてしまったら、それはそれで危ない。本書の中の「同調の道具」という言葉は厳しい。