外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD

外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD

私は常日頃から護送船団方式の在来種の保護に疑問を抱いてきた。外来種というだけで駆除する、それは本当に正しいのだろうか。この本はその疑問に見事に答えてくれた。在来種と外来種が共存している森林、外来種を駆除するために導入した天敵が他の在来種に悪影響を及ぼしたコントロールの失敗、一時的には数的に繫栄したがその後生態系に組み込まれ数的に収束していった外来種、この本にある例はどれも考えさせられる例である。著者はこれらの例をもとに「新しい野生 THE NEW WILD」を提唱している。在来種と外来種が共存する新しい世界である。著者は外来種の駆除をやめるべきと言っているわけではない。外来種であれ、在来種であれ、人間に害を及ぼすものは駆除すべきとも言っている。私はこの意見に賛成する。
古来より不変な自然などあり得ない。確かに人間の往来により生物の移動速度は早まったが、人間がいなければ全く移動がなかったかというとそうでもない。そもそも我々が口にしている動植物のかなりの数がもともと外来種であり、我々人間(ホモサピエンス)も5万年前にアフリカからきた「外来種」である。我々は外来種について、改めて考えるべきではないだろうか。