クローズアップ現代 “助けて”と言えない〜共鳴する30代〜

http://www.nhk.or.jp/gendai/kiroku2010/1001-4.html#thu

平野啓一郎さん(id:keiichirohirano)も番組で言っておられましたが、人間関係が希薄だから周りに相談できないのではないのです。むしろ、その逆なのです。人間は(とくに日本人は)、親しい人間ほど自分の弱みを見せたくないし、心配をかけたくない、そういうものだと思います。自分の問題で相手を苦しめたくない、苦しむのは自分だけでいい。これは、30代に限ったことではありません。リストラにあったお父さんが会社にいく振りをして職安に行き、職が見つからないまま自殺してしまう。あるいは、いじめにあっている子どもがそれを誰にも言わずに自殺する。これだって同じです。

でも、私はそうのような人たちを責める気にはなれません。なぜなら、自分だってそういう人間だからです。もし私が失業したとしても、誰にも相談しないかもしれません。平然とそれまでどおりブログを書いていて、どこかで耐えられなくなって突然消息を絶つ、そういうことをするかもしれないのです。私が悩みを相談するとしたら、すでに弱みを見せてしまった、あるいは見られてしまった友人・知り合い。一度見られてしまった人には、何度見せても同じですから。キリスト教圏の教会での懺悔のように匿名で話せる場所があれば、また違ってくるのでしょうが。

先日、NHKの別の番組で結婚式代理出席サービスを取り上げていましたが、問題の大小は異なれどこれも問題の本質は同じなのかもしれません。自分の友人が少ないことを見せたくない、自分が会社で知り合いが少ないことを見せたくない、それを見せることにより周りに心配をかけたくない。人間関係を守るために、人間関係を偽装する。考えてみると、悲しいですね。

このエントリを書くためにいろいろ検索している中で、2009年10月に放送した「クローズアップ現代 “助けて”と言えない」のゲストがなぜ湯浅誠さんでなく、平野啓一郎さんなのかという意見がありました。それに対する私なりの結論は次のとおりです。この社会には派遣村に象徴される、さまざまな問題があります。目に見える問題を解決するのはもちろん大切ですが、そもそも問題を抱えていること自体を周りに伝えられない人たちがいる、それも30代に多い。そこに焦点を当てるのが、この番組の主題ではないかと。とすると、これは労働問題そのものというより社会心理学やコミュニケーション論に近い。そこで、同世代でこのような問題に造詣がある平野啓一郎さんが選ばれたのではないかと。偶然両方とも番組をみた私からみると、この人選は正解かと思います。平野啓一郎さんのコメントは的確で、かなり本質を突いているかと思います。

この記事を書いていて、年賀状を出したのに返事がない従兄弟のことが気になりだしました。週末にでも連絡をとってみたいと思います。社会的なセーフティネットも大切ですが、心理的セーフティネットも大切です。問題解決はこういう小さなところから始まるのではないかと思います。