新元号が決まったので、改めて天皇陛下の退位について考えてみた

元号「令和」が決まった。自分が子どものころは明治・大正・昭和の3つの元号を生きた人はすごい長生きで生き字引のような人という印象であったが、今度は自分が昭和・平成・令和の3つの元号を生きる立場になったわけである。そして、自分が平均寿命まで生きて、今回の天皇陛下の退位が前例となれば、数十年後には令和の次の元号を生きることになるわけである。

 

歴史を振り返ってみれば、天皇(の即位退位)は常に政治利用されてきた。古くは保元平治の乱南北朝の動乱、近くでは明治維新で錦の御旗が薩長に利用された(幕府寄りだった孝明天皇崩御に関する疑惑は今でも消えていない)。

 

明治維新以降戦前まで天皇は現人神であった。そんな時代には天皇陛下が高齢で退位することなどは考えられなかったに違いない。今回の天皇陛下の退位の意向で、改めて我々国民は天皇陛下も人間であることを知ったわけである。第二次世界大戦の直後には、昭和天皇人間宣言があったわけだが、今回の退位は、平成の天皇陛下人間宣言と言えるかもしれない。

 

今回の天皇陛下の退位は、政治利用されないはじめての例かもしれない。それは平和を希求した天皇陛下の意向に沿うものだと思う。天皇陛下が政治利用されず人間として尊重される、そんな時代が続くことを願ってやまない。

映画「盆唄」

 
・福島双葉から避難した人々
・明治期に福島からハワイに移住した人々
天明の大飢饉で加賀・越中から奥州相馬にやってきた人々
 
いずれも移住先でいわれなき差別を受け、望郷の唄をつくる。人々の営みは続き、その唄は「ちょんがら」「盆唄」「BON Dance」と形を変えて受け継がれて行く。この映画は、今我が国で話題になっている移民問題を考えるヒントにもなるのではなかろうか。我が国に移民する人々だけでなく、我が国から移民した人々がいたこと、その歴史は忘れてはならないものだと思う。
 
「歌(唄)とは何か」を改めて考えたのは、自分が合唱団の同期会の後に見たからだろうか。

 外来種は本当に悪者か?: 新しい野生 THE NEW WILD

外来種は本当に悪者か? 新しい野生 THE NEW WILD

私は常日頃から護送船団方式の在来種の保護に疑問を抱いてきた。外来種というだけで駆除する、それは本当に正しいのだろうか。この本はその疑問に見事に答えてくれた。在来種と外来種が共存している森林、外来種を駆除するために導入した天敵が他の在来種に悪影響を及ぼしたコントロールの失敗、一時的には数的に繫栄したがその後生態系に組み込まれ数的に収束していった外来種、この本にある例はどれも考えさせられる例である。著者はこれらの例をもとに「新しい野生 THE NEW WILD」を提唱している。在来種と外来種が共存する新しい世界である。著者は外来種の駆除をやめるべきと言っているわけではない。外来種であれ、在来種であれ、人間に害を及ぼすものは駆除すべきとも言っている。私はこの意見に賛成する。
古来より不変な自然などあり得ない。確かに人間の往来により生物の移動速度は早まったが、人間がいなければ全く移動がなかったかというとそうでもない。そもそも我々が口にしている動植物のかなりの数がもともと外来種であり、我々人間(ホモサピエンス)も5万年前にアフリカからきた「外来種」である。我々は外来種について、改めて考えるべきではないだろうか。

 虚けの舞

虚けの舞 (講談社文庫)

この小説の主人公は織田信雄(常真)である。父信長存命中は伊勢攻めに失敗し、本能寺の変に際しては焼く必要のない安土城を焼き、清須会議では秀吉にも勝家にも無視され、賤ヶ岳では秀吉に利用され、小牧長久手では家康に利用され、小田原攻めで失敗して領地を取り上げられ、最後は秀吉の御伽衆となって、能を踊ることによって生きていく。これらの出来事が信雄の回想として語られる。もう一人の主人公の北条氏規は、能力がありながらそれを活かす場がなく行き長らえる人物として信長の次男であったにもかかわらず能力がなく何もできなかった信雄と対照的に描かれている。

この小説で印象的なシーンが2つ。一つは信長、信忠、信雄、信孝の親子四人での茶会。茶会の最中にお茶をこぼす粗相をする信雄だがうまく対応できず固まってしまう。それを鼻で笑う信孝。その途端に信長が信孝を足蹴する。慌てて間に入る信忠「三七(信孝)、三介(信雄)に詫びよ。茶会の席では人を嘲笑することこそ不作法なのだ」。親子四人の関係がよく描かれているシーンである。もう一つは信雄の夢の中でのシーン。夢に信長が現れて言う。「茶筅(信雄の幼名)、そちは猿(秀吉)の能役者となってまで生きたいのか」信雄は言う「父上、私は生きとうござりまする」何とも言えないシーンである。

戦国時代だからといって、誰もが大河ドラマの主人公のように誇り高く生き誇り高く死ねるわけではない。それどころか、ほとんどの人は無様であっても何とか生き延びようとしたのではなかろうか。そんなことを考えさせられる小説。

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