柴田元幸さん (東京大学教授・翻訳家)

柴田先生曰く、「翻訳は日本語と英語の両方に二股をかけるようなもの。原文に忠実であろうとすれば、日本語として不自然な表現になり、日本語として自然な表現にすれば、原文の意味を損なう」「翻訳本を読むことはライブCDを聞くことに似ている。どんなにいい音のライブCDを聞いても、実際のライブの雰囲気はわからない」「読者にこの翻訳はいい翻訳だと思わせるのはいい翻訳家ではない。いい作品だと思わせるのがいい翻訳家。」本そのものには「訳者○○」と書いてありながら、読者にそれを意識させないようにする。翻訳という仕事の難しさの一端をかいま見たような気がします。